突然ですが、皆様は学校の友達や会社の同僚とジャンプの話をしている時に、こんな経験をしたことありませんか?
あの漫画、打ち切りになっちゃったね…
いや~久しぶりに清々しい突き抜けっぷりでしたわwww
突き…抜け…?
こんな経験が無い方もたくさんいると思いますので説明すると、突き抜けというのは打ち切りを形容する言葉です。
ところで我々が慣れ親しんで使っている言葉1つ1つには、その語源について最低30分以上講義が出来るほどの膨大な歴史があると言われています。
今回は突き抜けという言葉のルーツとなる名著、ロケットでつきぬけろ!を紹介します。
週刊少年ジャンプで2000年34号~2000年44号に掲載。全10話、全1巻
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
全10話という、あのドリトライの1.9倍の速度で駆け抜ける圧倒的疾走感。
完全にスピードの向こう側へ「突き抜け」てしまっており、今もなお伝説の打ち切り漫画として語り継がれています。
カートレース漫画ですが、ジャンルに恥じぬスピード感です
以下では何がこの漫画を伝説たらしめたのか紹介します。
伝説⓪ 打ち切り決定前のお話の流れ
内容ですが、さすが伝説の打ち切りだけあり第1話のタイトルからして常軌を逸しています。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
OPENING Lap「ウィーミート ザ・ハイパー・ファンキーロケットボーイ ハルタ」
…この漫画の行く先が色々心配になるタイトルです。
久保帯人先生に採点してほしい
というわけで、こちらのザ・ハイパー・ファンキーロケットボーイが主人公である春田 倫雄(はるた みちお)です。
バイト先のコースを走ってみたところ、プロレーサーとして活躍する赤城のタイムを抜いたことから、彼の10週にも及ぶカート人生が始まります。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
自身の記録を抜かれたことを聞いた赤城は、その目で倫雄の実力を確かめるため対決をすることに。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
赤城はカート場で記録を出した時よりも遥かに腕を上げており敗北する倫雄。
しかし赤城も倫雄の実力を認め、自身の最後となる大会へ招待します。
そして倫雄もここらかカートレースの世界にのめり込んでいくことになります。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
と、ここまでで5話。
読んでみると第1話のタイトルにインパクトはあったものの、意外に普通の作品。(ヒットの匂いがするかは別の話として)
倫雄のカートの才能の根拠が弱いのが気になるけど
伝説は言い過ぎじゃない??
この漫画の伝説たる所以は、打ち切りが決まってからの展開と、物語の外にあります。
伝説① 打ち切り決定後のお話の流れ 唐突に出てくるヒロイン
赤城の最後の試合観戦中、突然イライラし始める倫雄。
痒い所に手が届かないんでしょうか。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
その原因は自分がプロとしてコースに出れないことへの不甲斐なさからでした。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
ここから倫雄のプロレーサーへの険しい道が長期連載で描かれる…
なんて思ってるうちに迎える第8話。
いきなり(本当にいきなり)数年後になります。倫雄もいつの間にかF3レーサーになってます。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
さらに唐突なのが、今まで影も形も無かった倫雄の彼女が登場。ちなみにヒロインだそうです。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
急に登場させた理由については幕間で説明されてはいるのですが(お察しの通り尺の都合)、まるで1話から登場しているかのように馴染んでいるので、困惑すること請け合いです。
いっそ出さない方が良かったような…
尺の都合で諸々の過程をすっ飛ばし行われる、赤城と因縁あるチームとのレース。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
しかしこれも結末を描く尺が無く、またも時間をすっ飛ばす展開に。
最後はヒロインが妊娠したと冗談を言って、この漫画は伝説となりました。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
伝説③ Live Like Rocket!
さて、ポルシェ並みのスピードで話の流れを追いましたが、この漫画の魅力はそのストーリーだけではありません。
読んでいると否が応でも目に入ってくるLive Like Rocket!も唯一無二の存在です。
出典:松井勝法『ロケットでつきぬけろ!』(集英社)
直訳すると「ロケットのように生きろ!」。
作者からのメッセージというのは汲み取れるのですが、何度も目にすることになるうえに、特別物語とは関係ない場面で挿入されるので、未だに謎の多い存在です。
タイトルもだけどカーレース漫画で何故こんなロケットを推しているのか
伝説④ 単行本作者コメント&巻末コメント
最後はある意味お話以上の存在感を放つ作者のキユ先生自身の言葉について。
まずは単行本作者コメントから👇
この漫画はロックだ。そしてこの漫画を手にした君たちもロックだ。
……確かに相当ロックな漫画でしたが、この手のポエムは久保帯人先生くらいまで言語能力を磨かないと読んでてキツいというのはあります。
ちなみにこのコメントと一緒にキユ先生の上裸写真が載せられており、口先だけのロックではないことがイタいほど伝わります。
お次は本誌掲載時の巻末コメント👇
1話…WJをご覧の方初めましてキユです。今号から僕の新連載が始まりました。それではどうぞ。キユで「ロケットでつきぬけろ!」
2話…ここで次週予告!!来週はハルタのお母さん登場!!マザー・オブ・ラブでつきぬけろ!
3話…次週予告!!いよいよ赤城がベールを脱ぐ!!赤城の目的は!?ヒステリックにつきぬけろ!
4話…Hide記念館完成。楽曲だけに留まらず他面にまで行き渡ったあの人のロック。いいんですよ武井先生
5話…夏の夕方って好き。あのジメジメした感じが妙にエロチックだと思いません?冨樫先生
6話…ルーベンスの初優勝。大人になって人前であれだけ泣けるなんて感動でしたね荒木先生
7話…モラル欠如者。あの子ら多分携帯持ち始めて使いたくて仕方ないんでしょうね尾田先生
8話…だってプーさんですよ?ちゃんじゃなくてさん。寅さん並の慕われ方ですよね樋口先生
9話…毎回この欄はボツを食う。けどそれは自分が大人でありコドモであるとゆう事の誇りだ
10話…痛みを知らない子供が嫌い。心をなくした大人が嫌い。優しい漫画が好き。バイバイ
やはり目を引くのは他の作家に語り掛けるコメント。
しかもその相手がONE PIECEの尾田先生やジョジョの荒木先生、ハンターハンターの冨樫先生等ホンモノの伝説級作家なのです。
ロックな漫画家の辞書には「差し出がましい」という言葉は無いのです。
そして最後はロケットでつきぬけろ!は知らなくても、このフレーズは知っているという方が多いであろうコメント。
心をなくした大人というのは編集部ということなんでしょうか。
ちなみにこの打ち切りの後、再び週刊少年ジャンプに帰還しますが、こちらも10話で突き抜けました。
その紹介は👆の赤マーカーをクリックで読めますので、是非次なる伝説を体感してください。
ご愛読ありがとうございました!!
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