週刊少年ジャンプ2025年48号でエキデンブロスが終了となりました。全17話
終了号を見て分かるように、2026年の箱根駅伝まで連載がもたなかったという何とも皮肉な結果に。

同時期に連載していた、半年の短期集中連載であるモジュロよりも短期というダブル皮肉……
それではここから物語の集大成となる最後のコマ、打ち切りになった原因考察について書いていきます
最後のコマ
こちらが物語の最後を飾るコマです。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)
現実の時間軸では箱根駅伝の前に連載が終わりましたが、物語の時間軸では無事にこの大舞台まで到達。
そして今年で最後なのに「また来年も必ずな」という若干モヤっとする剣崎さんのセリフで、この漫画は次の新連載に襷を繋いでいきました。
主人公の「走るってやっぱり楽しい!!」というセリフは、恐らく第1話で長距離走に目覚めた際のセルフオマージュだと思うのですが、比べてみるとセリフより絵の変化の方に目が行ってしまいますね。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)

第1話の方は違う意味で楽しくなってねーか…?
以下から打ち切りになった原因考察に移ります👇
打ち切り原因① 第一印象
原因①として挙げるのはこの第一印象です。
目を閉じて思い出してみてください。初めて『エキデンブロス』という作品と向き合った瞬間のことを……

思い出せない人は目を開けて下の画像を見てください

新連載予告に映るこの男は茄子のヘタのような髪形であり、華のあるビジュアルとは言い難い。
そして目玉を怪しげに爛々と光らせ、歯をむき出しにした笑顔でこちらを向いている。
しかし2つの目は焦点を結んでおらず、得も言われぬ不気味さを演出。

痩せた体も不気味さに一役買っています
要するに内容を吟味する以前の段階で「これはダメそう」と思わせるパワーがあり、アンケートのリソースたる読者の絶対数を大きく減らしたのではと思います。
とはいえ読者の誰もが予告に目を通すワケではないと思うので、第一印象の解釈を否が応でも目に入る巻頭表紙イラストまでとして該当箇所を見ると……うん、やっぱり厳しそうです。


とにかく主人公の「圧」が凄いんよ…
第一印象を測る指標として本ブログでも重宝しているジャンプ+試し読みPVは、同期のハルカゼマウンド、カエデガミ、ピングポングの中では最下位。

直近の似たような話数で終わった作品と比べても低水準であり、やはり連載開始以前から読む意志を示されない「0話切り」が多発していたことに疑いの余地は無いでしょう。
と、ここまでが作者と読者のメンブレバトル第1ラウンド。

結構な数の読者が脱落したことと思います
選び抜かれた読者たちには、更なる試練として第2ラウンドが待ち受けています👇
打ち切り原因② 主人公のキャラ
第一印象による読者選抜が終わり、中身を吟味するフェイズに入りますが、絵より存在感を放っていたのは主人公である信長のキャラだったのではないでしょうか。
この信長くん、最序盤から天然の人たらしであることがやたら描写され、さながら愛嬌の押し売りを読者に仕掛けてきます。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)
さらに「~だもん」といった喋り方や「プ…プいっ」といったオノマトペで姫サーの王子属性まで完備。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)

いやその……キツいっす
愛されキャラの主人公がダメという話では無いですが、信長に関してはそれが余りにも押しつけがましく、何より画風から仕草まであらゆる面でのアクが強いので、周囲に愛されてることに対する説得力が無いのがツラいところです。
作者が表現したいであろうキャラ付けと実際にお出しされたもののギャップが大きく、ここでもかなりの読者をふるいにかけたことと思います。

作者と読者のメンブレバトル第2ラウンド終了。
なんかもう掲載作は全部読む主義の人と、打ち切り愛好家くらいしか読者が残ってなさそうですが、第3ラウンドのピストルが鳴ります👇
打ち切り原因③ ツッコミどころが多い
原因①②では絵やキャラについてでしたが、ここでやっと展開を語る段になります。
そしてこの展開というのも違和感を感じる部分が多く、読者を作品に入り込みにくくしていたように感じます。

作劇上の違和感が人気を落とす要因になることは、誰もがイメージ出来ることと思います
ということで打ち切り原因として長々と語ることも無いのですが、これで終わるのも味気無いので以下では漫画のツッコミどころが大好物な管理人の、エキデンブロスで好きだったツッコミどころを3つ挙げます👇
好きなツッコミどころ① 第3話
まず採り上げるのは第3話のお話全般。
信長が大学入学を果たし、構内のコンビニのおばちゃんがひったくりに遭ったのを助ける回です。
この回のハイライトと言えば、信長が脱ぎ出すサービスシーンではないでしょうか。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)

恐らく作中で1.2を争うインパクトを残したシーンです
この場面に至るまでがとにかくツッコミどころが多く
・そもそも脱いでいるのが構内ではなく路上
・被害者を前に「なんすかこの子」とやたらフランクなひったくり犯たち
・2人いるのに2手に分かれて逃げないひったくり犯たち
・白昼堂々ひったくりするくらい犯罪に抵抗が無いなら信長ボコして逃げたりはしなかったのか…?
・信長が追い回してる30分+戻ってくるまでの時間、警察も呼ばず棒立ちしてるだけのおばちゃんたち
・この直後、30分以上ひったくり犯を追い回した信長に負ける沖縄の天才
と、本筋入る前から作品の評価に結構なキズを残した回だったと思います。
この第3話での作者の主張は「駅伝選手のカラダってスゲぇ」ということに集約されそうですが、それを言いたいが為に犠牲になった物があまりにも多すぎる…

個人的にはこの第3話が打ち切り漫画としてのエキデンブロスを象徴した回です
好きなツッコミどころ② めっちゃ縮められとるやないかい!
舞台は男鹿駅伝。
信長の学校(織谷)の天才ランナーと、実家の学校(清徳)のスポーツ漫画には絶対い無邪気で野性的強さを持つランナーによる2走でのレースシーン。
織谷は1走で1分20秒の差をつけて襷を渡されたのですが、最終的にすぐ後ろまで縮められます。
…のハズですが作中の描写は織谷が完勝したかのようなムードになっており、リードが無くなったことに誰も焦る様子は無いどころか和やかな表情で見守っています。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)

清徳の2走も「へっ!織谷のリードを完全に無くしてやったぜ」くらいに構えていいと思うのですが…
差を縮められた天才を責めろというワケではないですが、チームメイトにしても清徳の選手にしてもリアクションに違和感を覚えるシーンです。
好きなツッコミどころ③ 信長の父
最後は信長の父親にして、清徳の監督でもあるこの男。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)
彼の作中での行いを振り返ると…
・実の子供の才能を手元に置くのがもどかしいという理由で8年間ケニア送りにする
・才能の無いほうの子供には敬語使わせるほど冷たい
・自分の学校の旗色が悪くなると車内から怒鳴り散らす
・子供に光秀と信長という名前つける
と駅伝名門校の監督というメディアの露出も多そうな立場なのにこの破天荒さ。
出典:野乃大生『エキデンブロス』(集英社)
特にヤバいのが自分の子供を極めて個人的な理由で小6から8年間もケニアに行かせたこと。
グレてアフリカのギャングに転身とかしてもおかしくなさそうな…
ジャンプには他にも呪術の伏黒甚爾やめだかボックスの鶴喰梟といったドギツい父親キャラはいましたが、エキデンブロスはこれらの作品と違ってファンタジー要素が皆無なだけに、一層生々しさを感じます。
出典:原作…西尾維新/作画…暁月あきら『めだかボックス』(集英社)
厳格で駅伝という競技に対して妥協を許さない父親として描きたかったのかと思うのですが、上記の行いから凄まじいまでの毒親っぷりのほうが目立ちますね。
駅伝に脳を焼かれ過ぎると人はこうなってしまうのか…

打ち切りカルチャーに脳焼かれた管理人はどこの国に行けばいいですか
メンブレバトル第3ラウンド終了。
ここに来て編集部に打ち切りが言い渡され、作品が誌面から脱落することとなり、この選別バトルは幕を閉じました。
まとめ
以上、原因を考察してみました。
「駅伝に憧れる主人公が、寮の兄貴分たちと大舞台(箱根)で走ることを目指す」という単純な勝ち上がりを目標に据えた部活モノから捻った構想は良かったのですが、何を取ってもその見せ方が悪すぎた印象です。
それにしてもこの作品、作中で「~したフリ作戦」やら「メンブレバトル」やら打ち切りを語るうえで汎用性高そうなフレーズを遺してくれました。

俺の推してる作品、人気無いフリ作戦してるだけだから…🫨
内容がもっとハッチャケていたら、ドリトライのように後世に語り継がれる打ち切りになっていたかもしれません。

メンブレするヤツは心が弱ぇんだ
それでは今回はここまで!

ご愛読ありがとうございました!!













COMMENTS
こないだひゃくえむの映画見に行ったんですけど、この作品と照らし合わせたらやっぱひゃくえむの方が臨場感や気持ちが繊細に伝わってきました。エキデンは熱量は負けてないんですが、やっぱり恋愛と一緒で第一印象なんですね…漫画も。
あと最初の巻頭カラーで(光秀とマネージャーを除く)全員がいたので最初からデデン!と出すよりも後からこいつ誰だ!強ぇの感じを出しとけばなぁ、という気持ちがあります。後半はまじで好きでした。連載お疲れさまでした。
一番駄目だと思ったのはとにかく整合性の取れないストーリーですかね
最近優勝してないアニキ達を馬鹿にされたから見返す為に走り始めたはずなのにそのレースより前にアニキ達が優勝する(もう主人公走る意味ない)とか
部内レースで1位取った後にコネを疑われる(普通はコネ疑われた後に実力見せて黙らせるものでは?)とか
挙句の果てには伏線一切無しで無から出現した実の兄貴
絵柄については第一話の例のコマ以外はそこまで気になりませんでした
これは2025年を代表する打ち切り漫画
主人公のキャラは女性ウケ狙ったんですかね?
だとしたら露骨すぎて逆に上手くいってないような
第一人称 顔がなぁ、俺はこのせいで1話から切りだなと思ったこの思考は他の人にも多いはずやっぱ第一人称って大事なんだな。それで言うと約ネバは成功したんだなぁ。1話から引き込まれたな。
箱根駅伝の宣伝、このタイミングは連載始める時に1月まで続いてる想定だったんだろうな……
こういう打ち切り後から人気作描いてるジャンプ作家も結構いると思うんでカエデガミ、ピングポング共に次に期待したいところですねぇ〜
作者が駅伝好きなのは分かる
作者自身の力量不足もありますし陸上競技自体が突き詰めればただ走るだけ、ただ跳ぶだけなので漫画で面白く描くのは難しいと言う事でしょう。初連載で描かせるにはハードルが高かったような・・・。打ち切りは妥当ですがもう少しいい意味での爪痕を残して欲しかったなぁと思います。